
2016年11月26〜27日 水戸市 稽古場風
作・演出:又吉知行
出演:
小林拓司、昆節夫、宇田美幸
(以上、プロフェッショナルファウル)
小林祐介、澤田考司
(以上、劇団ACM)
首藤大亮(キミトジャグジー)、神百合愛
―チラシより―
「本日の最高気温は33度と予想されています」
涼しげに今朝の天気予報では言ってたけど、炎天下のグラウンドでその数字を信じているヤツは誰もいないだろう。
だがその暑さも、あとアウト一つ取れば良い思い出となる。
動悸が激しいなんて言葉では済まない。心臓が、暴れていた。
天下分け目の決戦が自分の身にも起こるとは夢にも思っていなかったから。
そういえば天下分け目は関ヶ原だっけ?桶狭間?まあいい。
これで甲子園にでも行けた日には受験勉強のことは考えなくていいんだろう。
まだまだこいつらと野球が出来る、そう思うと本気で自分は世界一幸せな人間だと思えた。
そんな甘い考えを嘲笑うかのように、カキーンという音が灼熱のグラウンドに響き渡る。
「おいウソだろ」ありきたりな台詞を吐きつつ、呼吸も出来ずに打球の行き先を見つめた。
ボールは無常にも左中間を破る長打となり、相手チームの応援団から一際大きな歓声が上がる。
ボールは急いで拾われホームに向かって投げられた。
一塁にいたランナーは覚悟を決めていたかのように迷わず三塁ベースを蹴っている。
ランナーがホームに着くタイミングでボールがキャッチャーミットに収められる。
判定は微妙だ。アウトか?セーフか?頼む審判!アウトだと言ってくれ!
ほんのわずかな溜めの後、審判は力強く両手を水平に切った。
体が急激に冷えていく感覚に襲われながらも、おれの頭はまだ関ヶ原か桶狭間か分からないままだった。
あれから10年という時は経ったが、変わらない憎まれ口を叩きながらもおれたちは一緒にいる。
ただ二つだけ変わったことがある。
一つは飲み物がスポーツドリンクではなく生ビールになったこと。
もう一つは、おれらはみんな●●になったということだった―。
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